※一応、バレンタイン小説『To be sweet...』の続きとなってます。
 読まなくても問題はありませんが。



贈り物



ある日、いつものように図書館から帰ると、ホテルに電話が入っていた。

「エド?」

彼女は確認すると、そのまま話し出す。

「毎日毎日、どこに言ってたわけ? ろくにホテルにいないで…!
何度も電話したのに、出てくれなかったんだから!」

長い前置きを終えて、彼女は一息つく。

「ああ…悪ィ。ところで、どうかしたのか?」

オレは軽くあしらう。
すると彼女は憤り、それでも落ち着いて再び口を開いた。

「今度の金曜日……3月14日でしょ?」

ためらいがちに、しかしはっきりと彼女――ウィンリィは言う。
日にちを確認する為だけに電話してきたのかと訝りつつも、オレはカレンダーを見た。
次の金曜日は、たしかに3月14日だった。

「そうだけど、何かあるのか?」

隣で、アルがおおげさに溜め息をつく音が聞こえた。
そんな事も分からないのか、とでも言うように。

「あのね、3月14日、ホワイトデーなの。
お返し、ちょうだい?」

何の用かと思ったら催促か、と半ば呆れる。
一瞬、断ろうかとオレは考えた。
きっと彼女の事だから、一寸の迷いも無い晴れやかな声で、とんでも無い額の物を請求するんだろう。
しかしバレンタインデーに彼女からチョコレートを貰った事を思い出し(しかも手作り)、
そう無下には出来ないかと考え直す。

「分かった…何がいいんだよ?」
「ん……エドに任せるよ」

彼女らしからぬ返答に「それでいいのか?」とオレは再確認する。

「うん。あ、アルに代わってくれる?」オレはアルと電話を代わる。
その後、アルとウィンリィは鎧の手入れの事など他愛の無い話をしていたようだった。

「兄さん、ウィンリィにバレンタインのお返しあげるんだって?」
「……ああ」

オレはベッドから起き上がり、アルの方を見る。

「明日買いに行こうかと思ってるんだけどさ。何がいいだろうな?」

問うと、アルは首を傾げた。

「何がいいだろうね―…」

アルはオレの言葉を繰り返し、続けた。

「あ、ボクちょっと用事あるから、悪いけど明日兄さんに付き合えないんだ」
「おう」

オレ達は久しぶりに別行動をとる事にした。




翌日外に出ると、冬の寒さも和らいで春が近付いている事が感じられた。
日差しが柔らかく降り注いでいる。
観光客が主な雑踏の中を、流れに逆らわず歩く。

立ち並ぶ店の看板やショーウィンドウを眺めながら、何か良い物はないかとオレは思案していた。

宝石店のショーウィンドウの前で立ち止まっている人を見かける。
その視線は飾られている宝石に注がれていた。
美の結晶である宝石が自分の元で輝く、想像するだけで素晴らしい事なんだろう……あの人達にとっては。

ウィンリィも、こんな物が欲しいと感じるのだろうか。
彼女に宝石は似合わない。
そんな気がした。
寧、機械鎧の10年モデルやらをあげた方が喜ばれそうな……。
自らが輝く彼女には、それ自体の存在を強調する宝石は似合わない。

そこまで考えて、オレは振り出しに戻ってしまった事に気付く。

再び街を見渡すと、今度は洋服店の看板が目に入る。
春の新作、と春らしい色合いで説明書きのあるショーウィンドウに、いくつかの服が飾られている。

「……これだな」

一番中央にある服。
オレは店の中に入った。

店員に告げると、それはあっという間に綺麗にラッピングされた。
代金を支払い、オレはその足でそのまま郵便局へと向かう。
買ったばかりの″バレンタインのお返し″を、ラッシュバレーへと送った。




数日後。

再びホテルの電話が鳴る。
3月14日の夕方だった。
先日と同じようにフロントの人に呼び出され、オレは受話器を手にとった。

「もしもし」
「…あ、エド? プレゼント、届いたよ」

そういえば、とオレは思い出す。
ウィンリィは続ける。

「…でも、あれ、Fleur≠フ新作でしょ? 高かったんじゃない……?」

店の名前が分かるという事は、大体の値段の見当はついているのだろうか。
その心配する口調にオレは苦笑する。

また彼女は、人の心配ばかりしている。

「お前な、そういう時は素直に喜べばいいんだよ」
「…うん。ありがと」

贈ったのは、淡いベビーブルーの、ワンピース。
新作というだけあって他の服より少し高かったが、別に気にする程でも無かった。

その色が、空の様な澄んだ青色が、彼女にきっと合うだろうと思った。
ウィンリィにこれでいいかと訊く事もせず、一方的に、あれを贈った。
似合うと思った、という単純な理由で。
喜んでくれるのかも分からず、これでは、贈り物ではなく押しつけになってしまった。

「……ごめんな、お前に何がいいか訊けば良かった」
「ううん」

ウィンリィは即答した。

「プレゼントは、物じゃなくて、気持ちを贈るものだから」

それにあのワンピース、実は欲しかったんだ、とウィンリィは付け足した。
電話の向こうで、ウィンリィが微笑んだのが見えた気がした。

「エドが選んだ物なら何でもよかったんだけど…あたしの気持ちが通じたんだね」
「オレもチョコ貰ったから、それ相応の物返したかったからな」

「ありがとう」

本当に嬉しそうに、ウィンリィはその5文字を口にした。
意味の無い文字の羅列、それらが彼女の口から発せられる事により意味を持つ。
その言葉は感染力を持ち、オレの心をも嬉しい気分にさせる。

「今度、これ着て、エド達のとこ行くね」

「ああ、待ってる」

オレは電話を切る。

心が喜びや嬉しさで満たされていた。




贈られたのは空色のワンピースと、
喜んでもらいたいという感情。












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あとがき。

短い時間で急いで書いたら、乱雑、酷くグダグダな文になってしまいました;
許してくださいorz
精進します…ので…。

読んでくれてありがとうございました!




最終調整 08.03.13 琳

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