相思愛。

涼しい風が、開けられた窓から入ってくる。 カーテンは優しく揺れ、入ってくる日差しは柔らかい。 ピナコとアルは二人で買い物に出かけた。 数十分程前だ。 エドはソファに座り真剣な表情で錬金術書を読んでいる。 久しぶりに機械鎧を作る必要がないウィンリィは、デンと戯れていた。 ふと思いつく事があり、彼女は立ち上がる。 デンは床に寝そべったまま動かない。 ただ彼女が何をする気なのかと、首だけ動かして追っている。 ウィンリィはソファの裏側へと回った。 両腕をソファの背もたれに乗せ、体重を預ける。 エドを見ると彼の視線は本に向かったままだった。 よっぽど集中しているらしい。 「ねぇ」 エドの邪魔をすると分かっていながら、声をかける。 「……ん」 僅かに、声だけで反応するエド。 「今、あたしが…『好き』って言ったら、どうする?」 ただの気まぐれ。特別答えが欲しかったわけでもない。 もしかしたら答えてくれないかも、と彼女は考えていた。 エドは本をパタンと閉じ、ウィンリィを見る。 「どうするも何も…『オレも』って答えるけど?」 半ば呆れたように、 そんな事は当たり前だとでも言うように、 一瞬の躊躇もなく、 エドは言った。 そしてまた手にした本を開く。 「――っ!」 言葉が耳に入り、その意味を理解した途端。 ウィンリィの顔が、顔から火が出たと言えるくらい、真っ赤になる。 (冗談の、つもりだったのに) あまりにも唐突な不意打ち。 「……」 エドは何か思案した後、本をテーブルに投げるように置いた。 そしてそのまま右手でウィンリィの手首を掴んだ。 「ひゃっ…!?」 突然の事に驚き、彼女は声をあげる。 エドが手首を掴む力はそんなに強くはなく、離そうと思えば振り払う事が出来た。 けれどウィンリィは振り払わなかった。 振り払いたいと思わなかった。 機械鎧の右手は冷たく、火照った腕に心地よい。 「……、エド?」 手首を離さないエドに、戸惑いがちに尋ねる。 彼は答えず、ウィンリィを、腕を軽く引っ張り誘導した。 数秒後、彼女はエドの隣にストン、と収まる。 「……?」 その行為の意味が分からず落ち着かないウィンリィの手を、ようやくエドは離した。 「ウィンリィ」 名前を呼ばれる。 それだけで。ドクン、と、心臓が高鳴る。 自分ではどうしようもない。 目の前にいるのは、 機械鎧の顧客であり、生まれた頃からの幼馴染みであり、兄弟同然の存在であり。 そして何より、かけがえのない、存在。 エドがウィンリィに少し顔を寄せ、口を開いた。 「好きだ」 ウィンリィの耳元で小さく、しかし確かな声でエドが言う。 「………」 すぐには、答えられなかった。 「っ、ウィンリィ!? ごめん、嫌だったら――」 エドが彼女を見て狼狽する。 頬を、涙が伝い落ちていた。 「…嬉し泣きだから…大丈夫」 そういえばエドに、 『次に泣かせる時は嬉し泣きだ!』 と言われた事があったのを、思い出した。 ウィンリィは微笑んだ。 それから再び口を開く。 好き、心惹かれる、想っている、愛しい、 そのどれも、今の感情とは違う気がした。 言葉に表せない感情。 「…あたし、も」 絞り出すように、ただ一言。 エドにはそれで十分だった。 「元の身体に戻るまで…色々と迷惑かけると思うけど、頼むな」 「そんなのっ…いいに決まってる、じゃない」 涙を拭い、彼に笑いかける。 エドも笑い返してきた。 笑顔が返ってくる、そんな些細な事をとても幸せに感じた。 微笑む彼女の姿はとても綺麗で、しかしエドはそれを口には出さなかった。 エドは手を伸ばして彼女の髪に触れる。 そして優しく彼女を引き寄せた。 「…エド、大、好き」 ウィンリィが呟くように言い、静かに目を閉じた。 二人は近付いていき、 「ワン!」 不意にデンが吠えた。 機敏に起き上がり、デンは玄関へとかけていく。 トットット、と軽快な音が響く。 玄関に着いたのか足音が止まり、もう一度デンが吠えるのが聞こえた。 続いて。 間髪入れず、ガチャ、「ただ今ー」という声。 買い物袋を手にしたアルが現れ、ピナコの顔が覗く。 「〜〜〜〜っ…」 エドとウィンリィは精一杯離れて座っていた。 (あ、危なかった…!) エドは内心そう思う。 二人の顔が真っ赤なのに、気付いたのか、気付かなかったのか。 アルが訳知り顔で微笑んだ、ような気がした。 一方、ウィンリィはまた嬉しさがこみあげてきて。 (今日…五月、三日…忘れないように、あとでカレンダーに印つけよ) エドに気付かれないように微笑む。 幸せ、を感じた。 五月三日、忘れられない記念日になりそうだった。
あとがき。 503(=エドウィンの日)小説です。 記念日、ということで。 告白にしてみました。 (エルリックJr.の誕生日なんてっ、書けません!//) いつもヘタレな兄さんなため、ウィンエドになっていたような気がする。 なのでエドウィンを目指してかきました。 やっぱり文才が欲しいですorz それでは常套句、こんな駄文を、 読んでくれてありがとうございました! 最終更新 08.05.03 琳